川崎市北部の多摩区と宮前区にまたがる生田緑地は東京・新宿から電車で40分足らずという近さながら、豊かな自然が残っている。その生田緑地の東口を入ってすぐの場所にあるのが川崎市立日本民家園だ。

国内各地から移築された古民家が展示されている

日本から急速に消えつつある古民家を保存し、昔の民家の暮らしをしのぶことができるようにすることを目的に、1967年に開園した。東日本を中心に国内各地から古民家や水車小屋などの建物20棟以上を移築した野外博物館となっている。
民家園の入り口は正門、奥門、西門の3カ所ある。最寄り駅に一番近い正門から入ると、券売所と同じ建物の中に本館展示室がある。ここでまず日本の古民家の構造など基本的な知識を学べる。年に2回、民具や建築に関する企画展示もある。
展示室を出ると、いよいよ本物の古民家と対面する。1軒目は「原家住宅」。川崎市中原区内で1911年(明治44年)築の豪壮な2階建て住宅だ。隣には「宿場」というテーマで、馬宿など17~19世紀に建てられた4棟が並ぶ。それぞれ福島県、奈良県、愛知県、長野県から移築された。
一般的に民家は、建てられた後も暮らしに合わせ改造されることが多い。移築された古民家は、どんな改造が加えられたかを詳しく調べ、基本的に建築当初の姿に戻している。外観だけでなく、内部も見学できる。屋内には当時の農具や生活用品なども展示され、昔の人々の暮らしぶりを想像しやすくなっている。
東京から訪れた50代の女性に話を聞くと「子どものころ、祖父母が住んでいたのがこういう古い民家だった。古民家や昔の暮らしぶりを見ていると懐かしさがこみ上げてくる」とうれしそうだ。
「宿場」の隣は「信越の村」がテーマ。国の重要文化財に指定されている富山県・越中五箇山の合掌造りの民家「江向(えむかい)家住宅」(18世紀初期の建築)などが並ぶ。ここには、岐阜県・飛騨白川郷の合掌造りの民家を利用した「そば処」もあるが、現在は耐震工事のため営業休止中だ。2020年春に再開の予定という。
展示はさらに「関東の村」「神奈川の村」「東北の村」と続き、国の重要文化財も複数ある。民具の製作実演などのイベントや、職員による展示解説なども定期的に開いている。事前に日本民家園のウェブサイトで情報を確認し、訪問計画を練ることをお勧めしたい。
(川崎支局長 宮田佳幸)