ご当地講義で地元理解 若者の定着目指す

新潟大や神戸大「日本酒学」/同志社大は「京都科目」

大学が地域の主力産業や文化を学問として探究し、学生に理解を深めてもらう取り組みが広がっている。酒どころの新潟や兵庫では「日本酒学」の講座が相次いで始まり、新商品を開発するなど地域振興につなげる動きも出てきた。地名を科目の冠に付けた「ご当地学」も各地で盛んだ。大学は「地元」を学んだ人材の育成や地元定着への貢献を目指している。

2018年度に「日本酒学センター」と講義科目「日本酒学」を開いた新潟大学。初年度の講義の履修希望者は当初定員の4倍の800人に達し、初講義で立ち見も出る人気を集めた。2年目の19年度の履修希望者も初年度と同規模で、学生の関心は高い。

日本酒学は地元の有力産品である日本酒を文理の双方から学問として体系化する目的で始まった。法律や飲酒の影響、酒蔵の経営など、法学や経営学、農学とあらゆる観点で分析する。新潟大の岸保行准教授は「身近な日本酒を自分の専門分野にひき付けて学べることが、若い学生の関心を集める要因となっている」と手応えを話す。

日本酒学には新潟大と新潟県、県酒造組合の3者が加わる。日本酒は国内市場の縮小や若者の「日本酒離れ」などが顕著だ。こうした現状に対する強い危機感が関係者の背中を押した。

外部機関との連携が商品化にもつながっている。新潟大では県醸造試験場などと連携し、地元観光地の「北方文化博物館」名物のフジの花から分離した酵母で新種の日本酒を開発した。同館で来年春の販売開始を目指している。

農学部鈴木一史教授は「ストーリー性のある日本酒開発では、特に文系の先生の活躍が期待される」と話す。県の醸造試験場との連携は今後の日本酒学にも生かせるという。

「灘の酒」で知られる兵庫県でも神戸大学が日本酒学に取り組む。神戸大は18年10月、灘五郷酒造組合の提供するオムニバス講義として「日本酒学入門」を開講した。19年度からは継続的に開設する科目の「総合教養科目」に変更した。

神戸大は日本酒学を神戸の地域や文化を総合的に学ぶ「神戸学」の1科目に位置付けている。日本酒以外に阪神大震災について学ぶ科目のほか、海洋環境に主眼を置いた「瀬戸内海学入門」など11科目を神戸学の枠組みで展開。地元への理解を深める講義に注力する。

神戸大には近畿出身と他地域出身の学生がおよそ半々の割合で在籍している。大学教育研究推進室長の米谷淳教授は神戸学に取り組む狙いをこう語る。「地元への若者定着にもつなげていきたいし、何よりもせっかく神戸大学に入ったのに神戸を知らないでいるのはもったいない」

同志社大学も18年度、全学共通で実施する教養教育科目の中に「京都科目」を設けた。

同志社大は17年12月、京都への移転が決定している文化庁と包括協定を締結した。これを受け、教養教育科目の中に「クリエイティブ・ジャパン科目」を開設した。京都科目はその中の一つだ。アニメ、ゲームなど世界が注目する現代日本文化の価値を考察する「クールジャパン科目」も設けた。

京都科目の狙いは京都を題材に「日本人の美意識、自然観などを身につけ、日本文化への理解を促す」ことだ。京都の地理や歴史、文化、産業を幅広く学ぶ京都学概論のほか、外部から専門家を招き、30人程度で学ぶ実践的な講義もある。

「華道から見る京都の伝統文化の発展」は全15回の講義のほぼ半分で実作も行う。「現代町家論」は実際の京町家を見学したり、伝統的な町並みをまちあるきで体感したりして、自分たちで町家の活用策をまとめる。

「地元」について学ぶ科目は総じて学生の人気が高い。大学は官民から人材輩出や産学連携が期待されており、「ご当地学」を設ける動きはさらに広がりそうだ。

(松添亮甫氏、松田拓也氏、荒牧寛人氏)

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